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外科系医師への手当支給は施設基準の要件|緊急手術加算1・外科医療確保特別加算の手当義務を医事課向けに解説

外科系医師への手当支給は施設基準の要件|緊急手術加算1・外科医療確保特別加算の手当義務を医事課向けに解説

手当支給が「施設基準の要件」になった背景

2026年度診療報酬改定では、外科系診療科に関わる2つの手術加算において、医師への手当支給が施設基準の要件として明記されました。

一つは処置及び手術の休日・時間外・深夜加算その1(以下、緊急手術加算1)。時間外・休日・深夜に緊急手術を行った場合に手術点数を大幅に増額する加算ですが、届出要件として「手術を行った医師への別途手当の支給」が義務化されています。

もう一つは外科医療確保特別加算。2026年新設の加算で、長時間かつ高難度な手術を実施した場合に手術点数の15%を加算しますが、こちらも「加算額の一定割合を医師への手当として支給すること」が施設基準に含まれています。

いずれも、「加算収益を医師の処遇改善に還元する」という制度趣旨を担保するための要件です。医事課の担当者にとっては、算定管理だけでなく人事・給与担当部門との連携が必要になる新しい実務上の責任が生じます。

2つの加算における手当要件の比較

2つの加算は、手当の「計算基準」「支給対象」「支給方法」がそれぞれ異なります。まず全体像を表で整理します。

緊急手術加算1

外科医療確保特別加算

手当の計算基準

加算額の規定なし(別途支給が要件)

加算額の30%以上が必要

支給タイミング

手術を行った都度、または年間件数に応じた額

年間対象手術件数に応じた額

支給対象

当該診療科の医師(全員への周知が必要)

当該診療科の医師(常勤医師へ8割以上)

既存手当との関係

休日・時間外・深夜手当とは別に支給

休日・時間外・深夜・当直手当とは別に支給

就業規則への記載

必要(写しを厚生局に届出)

不要(ただし全医師への周知が必要)

他の加算との連携

単独

地域医療体制確保加算2の処遇配慮に充当可

緊急手術加算1の手当要件

前提:手当支給は「(3)」として独立した要件

緊急手術加算1の施設基準では、チーム制または交代勤務制の導入(要件(1)または(2))に加えて、「(3)手当の支給」が別途独立した要件として設定されています。チーム制・交代勤務制を満たしても、手当を支給していなければ届出できません。

手当の支給方法:アまたはイのいずれか

手当の支給方法は以下のア・イから選択します。

ア:手術の都度、別途手当を支給する方法

時間外・休日・深夜に手術等を行った場合に、通常の休日手当・時間外手当・深夜手当・当直手当等とは別に、その都度手当を支給する方法です。「緊急手術手当」「オンコール手当」などの名称で手術実施のたびに支給します。

イ:年間件数に応じた手当を支給する方法

年間に行った時間外・休日・深夜の手術等の件数に応じた手当をまとめて支給する方法です。例えば年1回または半期ごとに、集計した手術件数に基づいて手当額を算出・支給します。

就業規則への記載と届出が必要

どちらの方法を選択する場合も、手当の支給方法・金額を就業規則に記載し、その写しを地方厚生(支)局長に届け出ることが必要です。また支給内容について当該診療科の全医師に周知していることも求められます。

手当の最低額の規定はない

緊急手術加算1では、手当の金額に下限規定はありません。「加算額の何割以上」という縛りはなく、「別途支給していること・就業規則に明記していること・届け出ていること」が要件です。ただし制度の趣旨からは、実態として医師の処遇改善につながる水準での設定が求められます。

外科医療確保特別加算の手当要件

「加算額の30%以上」という明確な下限

外科医療確保では、手当の金額に明確な下限が設定されています。

当該診療科の医師が行った年間の対象手術件数に応じ、休日手当・時間外手当・深夜手当・当直手当等とは別に、当該加算額の100分の30以上に相当する額を総額として当該診療科の医師に支給すること。

「加算額の30%以上」というのは、年間に算定した外科医療確保の加算点数の合計額(10円/点換算後)の30%以上を、手当として支給しなければならないということです。

支給先の内訳:常勤医師への8割以上

支給する手当総額のうち、8割以上を当該診療科の常勤医師に支給することが必要です。非常勤医師・アルバイト医師には残りの2割以内を支給できますが、常勤医師への優先的な還元が求められています。

周知義務

手当の支給内容について、病院内の全ての医師に周知していることが必要です。診療科内だけでなく、病院全体の医師への周知が求められる点が緊急手術加算1と異なります。

地域医療体制確保加算2の処遇配慮への充当が可能

この手当を、地域医療体制確保加算2の施設基準で求められる「特定診療科※の医師への特別な給与上の配慮(毎月決まって支給されるもの)」に充当することは差し支えないとされています。ただし、地域医療体制確保加算2の処遇配慮は「毎月決まって支給されるもの」が要件であるため、充当する場合は月次支給の設計が必要です。

※特定診療科とは、全国的に若手の医師数が減少傾向にあり、地域において特に医師の確保が必要とされている「消化器外科」「心臓血管外科」「小児外科」「循環器内科」の中から3つ以内で特定したものです。

手当の計算例

緊急手術加算1の場合(方法ア)

深夜加算1を算定した手術(手術点数10,000点)の場合、加算額は16,000点(16万円)です。これとは別に、例えば術者への緊急手術手当として1万円を支給するといった設計が考えられます。具体的な金額は各病院の就業規則で定めることになります。

外科医療確保特別加算の場合

年間の対象手術100件、平均手術点数50,000点の場合を想定します。

  • 年間加算額の合計:50,000点 × 15% × 100件 = 750,000点 = 750万円
  • 手当支給の最低額:750万円 × 30% = 225万円以上(年間・診療科全体の総額)
  • うち常勤医師への支給:225万円 × 80% = 180万円以上

常勤医師が6名の診療科であれば、単純平均で1人あたり年間30万円以上の手当支給が必要な計算になります。実際の配分方法(均等配分・手術件数比例・術者・助手の区分など)は病院が定めることができます。

医事課が押さえるべき実務ポイント

1. 手当設計は人事・給与部門と早期に連携する

手当の支給方法・就業規則への記載・届出については、医事課単独では対応できません。届出準備の初期段階から人事・給与担当部門と協議し、設計を進める必要があります。特に外科医療確保では「年間加算額の30%以上」という計算が必要なため、算定実績の集計と連動した仕組みの構築が欠かせません。

2. 緊急手術加算1は就業規則の改訂と届出が必要

緊急手術加算1の手当要件では、就業規則への記載と地方厚生局への届出が義務です。届出のタイミング(施設基準届出と同時か、または事前か)についても確認が必要です。

3. 外科医療確保の手当は「算定額ベース」で毎年変動する

外科医療確保の手当下限額は、その年の加算算定額の30%で決まります。手術件数・手術点数によって毎年変動するため、前年度実績をもとに見込み額を設定し、確定後に調整するサイクルの設計が現実的です。

4. 「手当の支給実績」は施設基準の継続要件

届出後も、実際に手当を支給していることが継続的な算定の要件です。支給実績(支給日・支給額・支給対象者)の記録を保管しておく必要があります。監査・指導の際に提示を求められる可能性があります。

5. 手術実績データとの連動管理が不可欠

外科医療確保の手当は「年間の対象手術件数に応じた額」と規定されています。どの術式が対象か、誰が術者・助手として参加したか、何件の対象手術を行ったかを正確に集計できる体制がなければ、適切な手当設計ができません。

手術実績の管理にOpeOneを活用する

2つの加算の手当要件を満たすためには、いずれも手術実績の正確な記録と集計が前提となります。

OpeOneは、外科系チーム医療に特化した業務データ管理システムです。

  • 術式・術者・助手・開始・終了時刻の一元記録:緊急手術加算1の手当(ア方式・イ方式どちらにも対応)の算定根拠を蓄積
  • 対象Kコードの年間件数集計:外科医療確保の手当計算に必要な「年間対象手術件数」を自動集計
  • 診療科別・医師別の手術実績出力:手当配分の根拠データを医師・診療科単位で出力
  • 加算算定額の集計サポート:外科医療確保の「加算額30%」の計算基礎を整理

→ 手術実績管理・届出準備についてのお問い合わせ・デモはこちらのお問い合わせフォームからお願いします。

まとめ

緊急手術加算1と外科医療確保特別加算は、いずれも手当支給が施設基準の要件となっています。両者の違いを整理すると以下のとおりです。

緊急手術加算1は、手術の都度または年間件数ベースで「既存手当とは別の手当を支給すること・就業規則に記載して届け出ること」が求められます。手当の最低額の規定はありませんが、就業規則の改訂と厚生局への届出という行政手続きが伴います。

外科医療確保特別加算は、年間加算額の30%以上を総額として診療科の医師に支給することが義務です。うち8割以上は常勤医師に支給し、病院内全医師への周知も必要です。こちらは就業規則への記載は必須ではありませんが、手当額が毎年変動するため、算定実績との連動管理が実務上の課題になります。

どちらの加算も、手術実績データの正確な記録・集計が手当設計の基盤です。届出前に、手術管理システムの整備と人事・給与部門との連携体制の構築を早期に進めることが重要です。

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