外科医療確保特別加算・処置及び手術の休日・時間外・深夜加算その1|2026年改定で新設・強化された外科系加算の全体像と要件を解説

2026年改定で外科系診療科に関わる手術加算が大きく変わった
2026年度(令和8年度)診療報酬改定では、外科系診療科の働き方改革と医師確保を後押しする手術連動型の加算が整備されました。
一つは既存制度の見直しである処置及び手術の休日・時間外・深夜加算その1(以下、緊急手術加算1)。チーム制における緊急呼出し当番の配置要件の緩和や翌日休日以外の選択肢が提示され、届け出やすくなりました。
もう一つは外科医療確保特別加算の新設です。長時間かつ高難度な手術を多数実施する基幹病院を対象に、手術点数の15%を上乗せする加算で、外科医の処遇改善を直接的に評価する仕組みです。
ただし、外科医療確保の施設基準は多層構造になっており、全体像が見えにくいという声があります。本記事では、2つの加算の要件を整理し、自院の算定可否を判断するための実務情報をまとめます。
2つの加算の概要と収益インパクト
処置及び手術の休日・時間外・深夜加算その1
時間外・休日・深夜に行った1,000点以上の緊急手術に対し、手術点数に対して以下の割合を加算します。
区分 | 加算率 | 算定後の合計倍率 |
|---|---|---|
休日加算1 | 所定点数×1.6 | 2.6倍 |
時間外加算1 | 所定点数×0.8 | 1.8倍(入院外患者のみ) |
深夜加算1 | 所定点数×1.6 | 2.6倍 |
施設基準を満たさない場合に算定する加算2と比べて、加算率は2倍の開きがあります。手術点数10,000点の緊急手術(深夜)の場合、加算2では8万円の加算にとどまりますが、加算1では16万円となります。緊急手術が月10件あれば、年間で約960万円の収益差が生まれます。
外科医療確保特別加算(2026年新設)
長時間かつ高難度な対象手術(特定Kコードに掲げる術式)を実施した場合に、手術点数の15%を加算します。
例として、10,000点の対象手術であれば1件あたり1,500点(15,000円)の加算です。年間200件以上の対象手術が施設基準の要件となっており、仮に200件すべてが平均10,000点であれば年間300万円以上の増収になります(手術点数が高い術式ほどインパクトは大きくなります)。
全体像:要件の依存関係
外科医療確保を算定するには、複数の加算・体制が階層的に必要です。以下の構造を把握することが、届出準備の出発点になります。
外科医療確保特別加算(手術点数×15%)
│
├─ 必須:特定機能病院入院基本料 または 急性期総合体制加算
│
├─ 必須:長時間・高難度手術を年間200例以上
│
├─ 必須:チーム制 または 交代勤務制
│ + 全常勤医師への勤務間インターバル確保
│
├─ 必須:地域医療体制確保加算2
│ │
│ ├─ 前提:地域医療体制確保加算1
│ │ (救急搬送実績 + 勤務医負担軽減体制)
│ │
│ └─ 追加要件(特定診療科):以下のア・イから一つ + ウ・エから一つ
│ ア チーム制の導入
│ イ 交代勤務制の導入
│ ウ 医師事務作業補助体制加算の届出+全特定診療科への配置
│ └─ ICT活用で人数緩和(1.2〜1.3倍換算)
│ ├─ 必須:生成AI
│ └─ 追加で1種類以上:音声入力 / RPA / 患者向け説明動画
│ エ 特定診療科業務の研修修了看護師の配置
│
└─ 必須:年間対象手術件数に応じた手当支給
(加算額の30%以上を診療科医師に支給)緊急手術加算1は独立した加算として届け出ることができ、外科医療確保と要件が重複する部分もありますが、算定条件は別立てです。

緊急手術加算1の要件
緊急手術加算1を算定するには、届け出る診療科ごとに以下の(1)または(2)と(3)の組み合わせが必要です。
(1)チーム制または(2)交代勤務制の導入
チーム制と交代勤務制の詳細な要件については、別記事「チーム制と交代勤務制の施設基準を徹底解説」をご参照ください。
2026年改定での主な変更点は2点です。
チーム制・アの緩和: 緊急呼出し当番の人数が「診療科の医師数5名ごとに1名」から「2名以上(5名未満の診療科は1名以上)」に変更されました。小規模診療科でも届け出やすくなっています。
チーム制・エの新設(ウとの選択制): 従来の「当番翌日休日」に加え、「勤務間インターバル9時間+代償休息の確保(医療法第123条第1項・第2項準拠)」が選択肢として追加されました。B・C水準以外の医師にも同等の休息管理が求められます。
経過措置として、令和8年3月31日時点で届け出ている医療機関は令和9年5月31日までウまたはエを満たしているものとみなされます。
(3):時間外手当の支給(必須)
交代勤務制・チーム制いずれを選んでも、以下のいずれかの手当支給が必要です。
- ア:休日・時間外・深夜の手術等を行った場合、その都度、通常の当直手当等とは別の手当を支給し、全医師に周知すること
- イ:年間に行った手術等の件数に応じた手当を支給し、全医師に周知すること
実施内容を就業規則に記載し、写しを地方厚生(支)局長に届け出ることが必要です。

外科医療確保特別加算の要件
要件(1):診療科の届け出
外科医療確保を算定する診療科を地方厚生(支)局長に届け出ること。
要件(2):病院の基本要件
以下のいずれかを届け出ていること。
- 特定機能病院入院基本料
- 急性期総合体制加算
要件(3):長時間・高難度手術の年間実績
対象手術(特定Kコードに掲げる消化器外科・心臓血管外科等の術式)を年間200例以上実施していること。
対象となる手術は食道・胃・大腸・肝胆膵・心臓・大血管など、高度な技術と長時間の手術時間を要する術式です。具体的なKコードは施設基準通知に列挙されています。
要件(4):チーム制または交代勤務制+勤務間インターバル
当該加算を算定する全診療科において以下の全てを実施すること。
- ア:当該診療科の経験5年以上の常勤医師(週4日以上・週31時間以上)が6名以上配置されていること
- イ:チーム制または交代勤務制を導入していること
- ウ:診療科に配置されている全常勤医師について、B・C水準(特定対象医師)の指定にかかわらず、医療法第123条第1項・第2項に規定するものと同様の勤務間インターバル9時間および代償休息を確保すること。また特定対象医師については同条第3項の配慮義務も果たすこと
緊急手術加算1のチーム制では「翌日休日またはインターバル確保(選択制)」でしたが、外科医療確保ではインターバル確保が全常勤医師に義務として求められる点が異なります。
要件(5):他の保険医療機関との連携体制
- 地域の他の保険医療機関と、対象手術の実施体制および術後フォローアップ体制について事前に協議していること
- 協議内容を公表するとともに、当該患者に説明していること
要件(6):研修体制の整備
臨床研修終了後の医師を対象として、対象手術に係る診療科における医師法第16条の10に規定する計画に定められた研修体制が整備されていること。
要件(7):地域医療体制確保加算2の届け出(必須)
外科医療確保を算定するには地域医療体制確保加算2(以下、地域医療確保2)の届け出が前提条件となります。 しかも単に届け出ているだけでなく、外科医療確保を算定する診療科が「地域医療確保2における処遇に係る配慮の対象」となっていることが必要です。
地域医療確保2の施設基準については次のセクションで詳しく解説します。
要件(8):年間手術件数に応じた手当支給
年間の対象手術件数に応じ、休日手当・時間外手当・深夜手当・当直手当等とは別に、当該加算額の30%以上に相当する額を総額として当該診療科の医師に支給すること。また、その額の8割以上を当該診療科の常勤医師に支給し、支給内容を院内全医師に周知すること。
なお、この手当を要件(7)の地域医療確保2における処遇への配慮に活用することも認められています。

地域医療体制確保加算2の要件
地域医療確保2は2026年改定で新設された加算(720点)で、既存の地域医療体制確保加算1(620点)の上位区分に当たります。
前提:地域医療体制確保加算1の要件を満たすこと
- 救急搬送・周産期医療・小児救急医療に係る相当程度の実績
- 病院勤務医の負担軽減および処遇改善に資する体制の整備
- 特定対象医師(B・C水準医師)の年間時間外・休日労働時間が1,635時間以下(2026年度)・1,560時間以下(2027年度)であること
追加要件:特定診療科での「ア・イから一つ」+「ウ・エから一つ」
消化器外科・心臓血管外科・小児外科・循環器内科のうち地域で医師確保が特に必要な診療科を3つ以内で特定し、以下の取組を組み合わせて実施すること。
【ア・イから一つ選択:勤務体制】
- ア:交代勤務制の導入(常勤3名以上、夜勤1名以上、夜勤翌日休日等)
- イ:チーム制の導入(緊急呼出し当番2名以上(5名未満なら1名以上)、当番翌日の勤務間インターバル確保等)
【ウ・エから一つ選択:タスクシフト体制】
- ウ:医師事務作業補助体制加算を届け出ており、配置される補助者が全ての特定診療科の病棟または外来等に配置されていること
- エ:各特定診療科の術前術後の管理等に携わる看護職員について、集中治療・術後疼痛管理・呼吸ケア等の特定診療科に係る適切な研修を修了した者がいること
また、特定診療科の医師に対し、他の診療科とは異なる特別な給与上の配慮(毎月決まって支給されるもの)を行っていること。
医師事務作業補助体制加算のICT活用による配置緩和
地域医療確保2のウ要件(医師事務補助体制加算の届出)と組み合わせることで、ICT活用による配置基準の緩和(2026年改定で新設)も同時に活用できます。
生成AIをはじめとするICT機器を組織的に活用した場合、医師事務作業補助者1名を最大1.3名として配置人数に算入できます。
区分 | 換算倍率 | 必要な要件 |
|---|---|---|
区分オ | 1.2倍 | ①生成AI(必須)+セキュリティ・AIガイドライン準拠+全補助者への研修 |
区分カ | 1.3倍 | 上記に加え、②音声入力・③RPA・④患者向け説明動画(10種類以上)のいずれか1つ以上 |
ただし、ICT緩和区分を届け出るには直近3か月以上、実人数で配置基準を満たしている実績が必要です。ICT導入直後に届け出ることはできません。
自院の算定可否チェックリスト
緊急手術加算1
- 届け出る診療科でチーム制または交代勤務制を導入できるか
- チーム制の場合:緊急呼出し当番を2名以上(5名未満なら1名以上)配置できるか
- 当番翌日の休日確保、または勤務間インターバル9時間の管理体制があるか
- 時間外・休日・深夜手術に対する別途手当の支給と就業規則への記載ができるか
- 手術開始・終了時刻と術者・助手の記録を5年間保管する体制があるか
外科医療確保特別加算
- 特定機能病院入院基本料または急性期総合体制加算を届け出ているか
- 対象Kコードの手術を年間200例以上実施しているか
- 当該診療科の経験5年以上の常勤医師が6名以上いるか
- チーム制または交代勤務制を導入できるか
- 全常勤医師への勤務間インターバル9時間の管理体制があるか
- 地域医療体制確保加算1の要件(救急搬送実績・B水準医師の時間外管理)を満たしているか
- 特定診療科(消化器外科・心臓血管外科・小児外科及び循環器内科のうち3つ以内)を特定できるか
- 医師事務補助体制加算を届け出ており全特定診療科に補助者を配置できるか、または研修修了看護師がいるか
- 地域の他の保険医療機関と手術実施体制について協議・公表できるか
- 加算額の30%以上の手当を診療科医師に支給できるか
記録管理をどう運用するか
緊急手術加算1・外科医療確保特別加算ともに、算定・届出の根拠となる手術や業務記録を継続的に蓄積する仕組みが不可欠です。
特に外科医療確保特別加算では、全常勤医師の勤務間インターバル管理(医療法第123条第1項・第2項)が義務となっており、手術終了時刻の正確な記録が代償休息の管理根拠にもなります。また、年間手術件数に応じた手当支給の算定基礎として、術式・件数の実績集計も必要です。
OpeOneシリーズは、外科系チーム医療に特化した手術情報を含む業務データ管理システムです。手術実績、勤務体制、担当医師の健康確保に関して一元管理することで、加算管理の課題に直接対応できます。
OpeOne製品ページ:https://guide.opeone.com/
OpeOneで実現できること
- チーム医療DX:実態のあるチーム医療のログ
- 勤務体制の管理:診療科のチーム体制や緊急呼び出し当番の情報管理
- 担当医師の業務記録:該当手術を担当した医師とその後の業務状況の把握
- 医師・各部署への支給に関する伝達:情報連絡の漏れ・ミスを防止
→ チーム制や健康確保管理についてのお問い合わせ・デモはこちらのお問い合わせフォームからお願いします。
まとめ
2026年改定で整備された外科系の手術連動型加算は、緊急手術加算1と外科医療確保特別加算の2つです。
緊急手術加算1は既存加算の施設基準緩和であり、チーム制の当番配置要件の見直しと勤務間インターバルの選択制導入により、これまで届出が難しかった診療科でも算定の機会が広がりました。
外科医療確保特別加算は2026年新設の加算で、手術点数の15%という高い加算率が設定されています。ただし、算定には地域医療確保2の届け出が前提となり、その先に医師事務補助体制・ICT活用・研修体制・他院との連携協議まで含む多層的な要件があります。
どちらの加算においても共通するのが、手術時刻・担当医師の正確な記録管理です。施設基準の根拠書類・手当計算・働き方改革の勤務管理、これらすべてが日常業務の中で蓄積される手術実績データに依存しています。届出を検討する医療機関は、記録体制の整備を早期に進めておくことが実務上の優先事項です。
加算ナビWebinarの御案内
日時
2026年4月13日 16時-
2026年4月15日 16時-
2026年4月17日 16時-
概要
2026年診療報酬改定における手術に関わる診療報酬加算制を解説します。
【関連する加算】
「処置及び手術の休日・時間外・深夜加算1」
「内視鏡手術用支援機器加算」
「外科医療確保特別加算」
「地域医療体制確保加算2」
【登壇者】
- ささがさん(@sasaga012):診療報酬改定に精通したX人気投稿者
- 大谷隼一(株式会社クオトミー代表取締役・整形外科医)
【内容】
- 2026年改定の手術
- 医師への手当・チーム制について
- 必要な要件・仕組みづくり
- 参加者Q&A
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主催:株式会社クオトミー(OpeOne運営会社)
